こんにちは。廣田です。
今月から新たな装いで、工務店様に向けたメッセージをお届けすることとなりました。
改めまして、よろしくお願いいたします。
新装第一弾となる今回は、「木造戸建住宅の壁量計算方法」についてのお話しです。
『建築確認手続きに関するルール』改正!
2025年4月から、木造戸建住宅の『建築確認手続きに関するルール』が改正されますが、もしや「まだまだ先だよね」と思ってはいませんか?
2025年4月以降の着工を想定し、そこから逆算をすると、設計段階で新しいルールに対応する準備をしておかなければなりません。つまり、壁量計算方法の変更に備える時間はもはや非常にタイトだということ。早急に、新しいルールに対応する準備を始める必要があるのです。
すでに、カウントダウンが始まっている状態です。
「まだ」ではなく「もう」だということを意識しつつ、少しでも早く学び始めることが大切です!
2025年4月「何」が「どう」変わる?
最初に、改正の内容についてご案内いたします。
2025年4月から行われるルール改正は、以下の3点。
- すべての新築住宅で省エネ基準適合が義務化されます。
- 木造戸建住宅の建築確認手続き等が見直されます。
- 木造戸建住宅の壁量計算方法が見直されます。
参考:国土交通省からのお知らせ「2025年4月からルールを改正します」
この改正は、木造住宅の新築における設計・施工を行っているすべての工務店様に関わる重要な問題です。
もしかすると、「誰かが代わりにやってくれるだろう」「協力してくれるだろう」と考えている方がおられるかもしれません。または、「うちは小さい建物だから適用されないだろう」と思ってはいませんか。
しかし、この改正は、一部審査省略があるものの、すべての新築住宅に適用されるルール。
全ての工務店様が対応する必要があるのです!
今回の改正は、木造住宅の新築における設計や施工を行うすべての工務店様にとって、避けることのできない重要なもの。
そして、スタートは2025年4月。もう1年を切って迫っている状態!
今から対応していかなければ、間に合いません……。
早めの準備と対応が求められるということを、いま一度確認して欲しいと思います。
4号建築物の区分け廃止!
では、改正の内容を詳しく見ていきましょう。
まず、現在「4号建築物」と呼ばれている区分けは廃止。2025年4月からは無くなり、代わるものとして『新2号建築物』と『新3号建築物(現行の4号建築物の扱い)』という区分けが登場します。
提出の図書が増えます
これまで省略されていた一部の図書の提出が、必要になります。
例えば、新2号建築物を新築する場合、構造関係規定の図書および省エネ関連の図書の追加(構造関係、省エネ、採光・換気、設備、仕様書など)が求められるように。従来の2号建築物と同様と考えると分かりやすいかもしれません。
ただ、基礎伏せ図や小屋伏せ図、各階床伏せ図など構造関連の図書を省略する代わりとして、仕様表を提出する等の一部合理化は図られます。そのため、従来の2号建築物で一連の作業に慣れている方も、新たな手順をスムーズに遂行するためには少々お時間を要するかもしれません。
そして、慣れていない方はなおさら手間取ってしまうことが予想されます。
木造戸建住宅の壁量計算等が見直されます
これまでは「重い屋根・軽い屋根」で区分して参りました。しかし、現代の木造住宅は仕様が多様化しています。重い屋根・軽い屋根という区分はあまりにも大ざっぱ。これからの建築物において、これでは必要壁量を適切に算定することはできない、ということを懸念しての見直しだと言えます。
また日本列島は南北に長く、北海道と九州では気温に大きな違いが生じます。これは、断熱の仕様や分量も異なるということ。
自動車産業、輸送、電力、建築……と、あらゆる業界・世界が、「脱炭素」社会の実現に向け、動き出しています。住宅に関して言うと、2050年カーボンニュートラルに向け、全ての新築住宅で「省エネ基準適合」が義務付けられる予定。その省エネ化で生じるのは、断熱材・省エネ設備搭載による建物の重量化。つまり、ZEH水準を満たす建築物であるためには、地域によって重さが大きく変化することになるわけです。
現行ルールのままでは壁量が不足するケースもあり、安全性が保てない場合も無きにしも非ず。省エネ基準適合が義務化される以上、単なる重い屋根・軽い屋根という区分だけでは対応できないと言えるでしょう。
少々難しく書いてきましたが、実は、今回の改正において国土交通省より、必要壁量を容易に把握できるための「早見表」と、算定するための「表計算ツール」が用意されています。こちらを活用すると簡易計算が可能となりますので、あまり気負わずに、まずは触って試してみて欲しいと思います。新しいシステムの習得には時間が必要です。慣れて使いこなせるよう、早めに確認と練習をしておきましょう。
迷った時はココ!分かりやすい『壁量計算』と『柱の小径』概要
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改正後に必要となるのは、以下のふたつ。
- 建築基準法施行令第46条の壁量計算
- 建築基準法施行令第43条の柱の小径および小径別の柱の負担床面積の算定
①~③の計算方法より、やりやすいものを選んで対応していきましょう。
①【表計算ツール】
公益財団法人 日本住宅・木材技術センターに用意されている表計算ツールを使用します。→ コチラ
エクセルで用意された表計算ツールがありますから、そこに、階高、各階床面積、屋根、外壁仕様、太陽光パネル、断熱材の重量などを入力。すると、必要壁量が算出される仕組みです。②の早見表よりも、実状に合わせることができます。
リンク先は、以下のようになっています。
②【早見表】
公益財団法人 日本住宅・木材技術センターに用意されている早見表を使います。→ コチラ
1階・2階の床面積の割合、階高、屋根葺き材などを選択することにより、必要壁量や柱の小径が決まる仕組みです。
重い屋根・軽い屋根という2種類の分類ではなく、住宅の状況に合わせた選択であるため、簡便ながらも実情に合った方法と言えます。
同じ形式の住宅を複数建てる場合には数値の流用も可能。その点でも嬉しい方法ですよね。
③【算定式】
<床面積あたりの必要な壁量>
Lw =(Ai・C0・Σwi)/(0.0196 ・Afi)
必要壁量は、荷重の実態に応じ上記算定式によって算出します。構造計算に似た方法で、窓や太陽光パネル、断熱材等の荷重を出す必要があり、手間のかかる方法と言えます。
<横架材相互の垂直距離に対する柱の小径>
de / l = 0.027 + 22.5・Wd / l2
柱の小径は、建築物の重量に応じた規定となっており、以下のどちらかで求めます。
・算定式と有効細長比によって、柱の小径を求める
・樹種等を選択し、算定式と有効細長比によって柱の小径を求める
・柱の小径に応じ、柱の負担可能面積を求める
算定式を使えば、柱の小径だけでなく負担可能面積の算出も可能なのですが、少々難しい方法です。
手間や難しさを考えると、実用的なものは①か②の方法になるのかと思います。
もちろん、やりやすい方法をお選び頂ければ大丈夫です。
どの方法が貴社にとってスムーズで納得できる方法なのか?それを確認するという意味においても、【早めに試してみる】こと。これが大切です。
一緒にがんばりましょう!
今回は、「木造戸建住宅の壁量計算方法」についてお話をいたしました。
なぜ改正が行われるのか、その経緯についても、お分かり頂けたかと思います。
家づくりのタイムスケジュールは工務店様や工法などにより様々ではありますが、一般的に10か月ほど。今から準備をすれば間に合います!
ぜひこのタイミングで、ツールのお試しをしてみてくださいね。
そして、もし行き詰まったなら、私共がしっかりとサポートして参ります。
弊社では、スムーズな建築確認申請のため、最新の情報と革新的なソリューションを提供してまいります。工務店様や設計者様のスキルアップには、今後のブログを参考にしてみてください。
迷った時には“ここ”にを合言葉に、一緒にがんばっていきましょう!